乱読サラリーマンのオリジナル書評

読書は教養を広げる、教養を広げれば、人生も豊かになる。そんな思いでブログを書き続けます!

【書評:告白(湊かなえ著)】 イヤミスの決定版

告白 (双葉文庫) (双葉文庫 み 21-1)

 

既に推理小説の人気サブカテゴリ―となっている”イヤミス”をご存知でしょうか。"イヤミス"とは読んだ後に嫌な気分になるミステリー小説のことを指します。人間の奥底に潜む負の部分を小説に散りばめ、謎解きとはやや相違した部分を強調することにより、読後にスッキリするのではなく、嫌な気分を作り出します。本書はこのイヤミスの女王と呼ばれている湊かなえさんの代表作です。松たか子さんが主演で映画化もされてますので、ご存じの方も多いことでしょう。

 

中学一年生の終業式に女性教師は担任のクラスのホームルームで『事故死と思われていた愛娘は、実は生徒に殺された。犯人である二人はこのクラスに今います・・・』という衝撃の告白から本書は始まります。また、警察には事故のままとするが、復讐のため、その二人が本日飲んだ牛乳にHIV患者の血液を混入したことを明らかにします。

 

事故死と報道されていた幼い子供が実は殺人死であり、その犯人がクラスメートであるというセンセーショナルな事実から犯人の関係者となり2年生に進学した生徒たちにも悲劇の連鎖がつづきます。

 

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【書評:スポーツ国家アメリカ(鈴木透著)】 スポーツから垣間見る現実世界とは

スポーツ国家アメリカ - 民主主義と巨大ビジネスのはざまで (中公新書)

 

ジャーナリストが書いたスポーツノンフィクションも良いですが、アカデミックの学者が書いたスポーツ書も読み応えがあります。文化・社会学の視点からアメリカ社会とスポーツの独自性を説いたなかなかの良書です。

 

アメリカ史では南北戦争後から数十年間を俗に『金ぴか時代』と揶揄されてます。イギリスから遅れてきた産業革命を契機に著しい経済成長を遂げました。しかしながら、ロックフェラーなどの著名な資産家が出現したかわりに、ほんの一部に偏った富、そして拝金主義、成金主義が蔓延りました。

この誤った過去を踏まえてアメリカでは、

  1. 公正な競争を保証するルールの必要性
  2. 一部の人間に利益を独占させない必要性
  3. 富の公正な配分の必要性

の教訓が生まれました。

実はアメリカのスポーツにはこの教訓から育まれた精神が埋め込まれています。例えば主審一人でグランドを縦横無尽にかけまわるサッカーと比較すると、ベースボールやアメリカンフットボールには何人もの審判で全体を監視しています。アメリカンフットボールでは他のスポーツに先駆けビデオ判定をも導入しました。そのような事実を踏まえると、昨今の社外取締役などを推奨するコーポレートガバナンス強化などの考えのベースとなることは同様な起因なのでしょう。

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【書評:維新の肖像(安部龍太郎著)】 失政はどこから生まれるのか

維新の肖像 (角川文庫)

 

平和の提唱者として、日露戦争を正義のための衝突と肯定し、戦後交渉でも力を発揮した朝河貫一。しかしながら、朝河の思いとは別に日露戦争後、日本は帝国化へと突き進むことになります。母国の変節ぶりを考慮した朝河は1909年に今なお読み続けられている【日本の禍機】を発表しました。

 

 

 

近い将来の災いへの警報を鳴らした朝河の予測通り誤った道を進み続けた日本は満州事変や上海事変を起こし、世界の列国から孤立への道を歩むことになります。

 

物語は反日感が強くなる1932年当時イェール大学で教鞭をとる朝河貫一と二本松藩士として戊辰戦争を戦った貫一の父朝河正澄の1968年当時と異なる時代の二重構造で進んでいきます。

 

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【書評:キリンビール高知支店の奇跡】現場力とは何か

キリンビール高知支店の奇跡 勝利の法則は現場で拾え! (講談社+α新書)


心が変われば行動が変わる

ここでいう心とは意識のことです。
それでは、会社という自分の思い通りにならない集団生活で会社の成功に沿った方向へ意識を変えることは簡単に出来るのでしょうか。変えるのが難しい魔物を自ら簡単に変えられるのでしょうか・・・。例外を除けば普通の社会人の方々にとって答えは否である。決して大人の意識は簡単には変わりません。

だからこそ、会社において管理職というのは存在する価値があるのでしょう。1人では簡単には変えられない人の意識を変えるフォローをする。そもそも会社というのは、どこにでもいる普通の人たちが営む集団であり、プロスポーツオールジャパンのような超一流だらけの集団ではありません。

 

本書では高知支店の成功を起点にキリンビールがシェアトップを奪い返すまでの熱いビジネスパーソンの軌跡を関係者の視点から書かれています。

 

元々キリンビールは、ライバルの追随を許さないビール業界のガリバーとして君臨していました。スーパードライの爆発的ヒットによりアサヒビールにトップシェアも奪われ、対抗策として、キリンの象徴的銘柄といえるラガーの味の変更も失敗となり、従来顧客にソッポを向かれます。

 

そんなとき営業拠点の長はリーダーシップとして何を目指すべきでしょうか?

 

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【書評:野望の憑依者(伊東潤著)】 悪党が滅びるとき・・・

野望の憑依者 (徳間時代小説文庫)

 

歴史小説といえば、戦国と幕末明治維新が、質量ともに抜きんでていますが、私は南北朝時代も好きです。しかしながら、この時代の歴史小説は僅かです。
鎌倉幕府を終焉させ、朝廷と武士が入り混じりながら、建武の新政を経て室町幕府を築く激動の時代を、歴史小説家の先生方には、もっとテーマとして取り上げてほしいと切に願っております。

 

南北朝時代の悪党といえば誰を思い浮かべるでしょうか、歴史観によって変わるでしょうが、朝廷に楯突いた足利尊氏鎌倉幕府政権に批判的な動きの楠木正成、はたまた後醍醐天皇を悪党と考える方もいるはずです。

本書は足利尊氏・直義兄弟とトロイカ体制を築き、足利政権樹立に導いた高師直を主人公に歴史ピカレスクロマンを鮮やかに描いてます。

悪党師直に、武力は劣るが政治の保守本流の直義、リーダーシップがあるのかないのかわからない(笑)尊氏。この3人を中心に物語は進んでいきます。

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【書評:IoTまるわかり(三菱総合研究所 編】 つながったらどう変わるのか・・・ 

IoTまるわかり (日経文庫)

 

ここ数年のバスワードの一つである”IoT”とはなんでしょうか。
Internet of Thingsの略称であり、モノのインターネット化と抽象的に説明がつきますが、IoTで世の中の何が変わるのでしょうか?

あらゆるモノがインターネットに繋がる・・・2020年には世界中でインターネットに繋がるモノの数は500億個になるといわれています。それだけ沢山のモノがインターネットに繋がったら何がどう変わるのでしょうか・・・?


前よりある近接した概念で
M2M(Machine to Machine)がありますが、それとIoTとは何が違うのでしょうか。

素朴な疑問を持つことが、本質を知るためには一番重要なポイントです。本書はそんな素朴な疑問を持った方にこそお薦めできる書籍です。

 

本書では、IoTのエッセンスをあらゆるモノがつながることを前提に

①あらゆるモノからあらゆるデータを吸い上げ

②データを可視化して分析する

③分析したデータが他のデータやアナログ世界と共生する

④その結果新たな価値を生むこと

だと説いています。

私なりの凡人脳で考えると③と④の間のデザイン構想力がキーになるのではないでしょうか。デザイン構想力とは、他の分野に例えれば、食材を合わせて新たに美味しく魅力的な料理の品を考える技術などに通じるスキルにも思えます。

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【書評:43回の殺意(石井光太著】 少年犯罪は時代を映す

43回の殺意 川崎中1男子生徒殺害事件の深層

 

 世を震撼させ、被害者、加害者共に未成年ということで大勢の方々が関心を寄せた川崎の殺人事件。気鋭のノンフィクションライターが、被害者である上村僚太君の父親(母親は取材拒否)から加害者の家庭環境を明らかにします。さらには被害者・加害者と知己のある同年代の少年への丹念な取材を通じ、本事件の残忍さだけではなく、社会の問題点を深く突きつけます。

 

離島で育ち、両親の離婚から続く家庭環境の変化により、川崎へ引っ越しした少年がなぜ事件に巻き込まれてしまったのでしょうか。また、被害者より年上とはいえ、同じく未成年であった加害者はなぜ、このような残忍な事件をおこしてしまったのでしょうか。

 京浜工業地帯の中心地で知られている川崎市生活保護の受給比率は全国平均と比較しても高く、さらに事件の現場となった川崎区はその比率が川崎市内でも抜きんでて高い結果となっており、住民が困窮している状況がみてとれます。その影響なのか加害者3人全ては社会への適用能力が低く、人とのコミュニケーションにやや難があったようです。

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【書評:生涯投資家(村上世彰著)】なぜ、コーポレートガバナンスが必要なのか

生涯投資家

 

著者はコーポレートガバナンスがさほど騒がれてない時期にファンドを率いて一世を風靡した村上世彰氏です。ライブドア事件阪神タイガースの上場問題などを鮮明に覚えている方も多いことでしょう。著者は本書では一貫して「コーポレートガバナンスと、その浸透による資金循環の促進こそが経済成長を促す策」だと言い続けています。

 
上場企業とは どのような役割を果たすべきなのでしょうか。

上場とは、株式が広く一般に売買されるようになることであり、上場企業は、株主や株を買おうとする人たちのために必要な情報を開示しなければならない。上場企業の経営者には、投資家の期待に応え続ける覚悟が問われる。思い通りに株主を選んだり、経営者が好き勝手に行うことはできなくなる。上場とは、私企業が「公器」になることなのだ。 (P22)

 

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【書評:全員経営(野中郁次郎・勝見明著)】イノベーションとは?

 

全員経営 ―自律分散イノベーション企業 成功の本質

 

経済成長、企業進展にイノベーションはかかせません。シュンペーターイノベーションを以下の5つに分類しました。

①新しい財貨の生産 (プロダクトイノベーション
②新しい生産方法の導入(プロセスイノベーション
③新しい販路の開拓(マーケットイノベーション
④原料などの新しい供給源の獲得(サプライチェーンイノベーション
⑤新しい組織の実現(オルガニゼーションイノベーション

また、シュンペーターイノベーションは少数の人間がリーダーシップを発揮してイノベーションを創造するものと想定しました。


昨今はiPhoneなどのように、それまでのゲームルールを刷新するような破壊的なイノベーションがもてはやされています。

 

本書では、シュンペーター同様にイノベーションは、企業の成長に不可欠としていますが、イノベーションの発生プロセスは、少数のリーダーシップではなく、全員経営と紐づけています。実は世界を代表する企業である、Googleシスコシステムズイノベーション創出と企業発展のために全員経営へと舵を切っています。

 

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【書評:サッカーと愛国(清義明著)】 スタジアムは社会の縮図なのか・・・

サッカーと愛国

 

世界で最も人気のあるスポーツはサッカーです。いっぽうでその事実は、世界で最も影響力の大きいスポーツともいえます。

実はFIFA国際サッカー連盟)にIOC国際オリンピック委員会)さらには国連これらの加盟国数をみると一番加盟国数が多いのが実はFIFAです。世界中の人を惹きつける磁力の源は何なのでしょうか。
 

人は本能的に対戦という魔物に惹かれます。さらには競技としてスタジアム内の試合そのものだけではなく、歴史的背景や文化を融合させることで、人はより一層惹かれ熱狂していきます。しかもサッカー専用スタジアムは観客と選手がいるグランドが近接しているのも他のスポーツにはない特質です。


また、通常他のスポーツでは応援者を「ファン」と呼ぶのに対し、サッカーでは「サポーター」と呼びます。通常サポーターは応援するだけではなく、チームへ意見を持ち、時と場合によってはチームを弾劾することもあります。

 

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