【書評:ゲノム編集からはじまる新世界】ゲノム・遺伝子と掛けてカーリング女子と説く
ゲノム編集からはじまる新世界 超先端バイオ技術がヒトとビジネスを変える
ゲノム(遺伝子)は究極の個人情報ともいえます。この究極の個人情報の全貌を未だ人類は科学的に解明できていません。また解明されている部分についても、多くの人は究極の個人情報である自らのゲノムについても把握していないはずです。
いっぽうテクノロジーの側面では、未だ全てが解明されていないゲノムを編集する技術だけは格段の進歩を遂げています。人間以外の動物にはゲノム・遺伝子を改変することも可能なところまで既に来ています。
しかしながら、ゲノム編集というテクノロジーをどこまで人類の進展に活用するかは倫理的な課題などから共通解はみつかっていません。では、クリスパーキャス9とよばれる、最新のゲノム編集技術の特徴と進化はどこまで進んでいるのでしょうか?
- 高い操作精度
いままで100万回に1回しか成功しなかったマウスの狙った場所への遺伝子組み換えを90%の確率で成功させることができる - 汎用性
いままで哺乳類ではマウスにしか通用することのできなかった遺伝子組み換えが、すべての動物に通用することができる技術である - 技術の使い易さ
従来の遺伝子組み換え技術は熟練した技術者のみが扱えるものであったが、クリスパーは少しトレーニングをすれば高校生でも扱えるようになった。
遺伝子からくる重大疾患などの医療への応用など社会的意義のある活用は無論のこと、ゲノム編集クリスパーには全人類の幸福への道筋として大いなる可能性を秘めています。しかしながら、その反面ゲノム(遺伝子)を改変するということは、いうまでもなく大きな倫理的な課題も内包しています。
また、興味深いところでは、クリスパーキャスによってゲノム編集する技術は大いに発達しましたが、ゲノム(遺伝子)の解明が未だ道半ばという事実です。
遺伝子個々と疾患との関連性がすべて解明されていないなか、例外的に解明されている病気はメンデル性疾患など僅かであります。僅かな種類の難病でも根本的に治すことは、人類の輝かしい未来への第一歩とも考えられます。しかし格段の進歩を遂げたゲノム編集技術でも、発病前にその最新技術を施さねばなりません。発病後のゲノム編集を応用した治療の実現は未だ困難であります。
細胞を分類してゲノム編集をみてみましょう。細胞は大きく分けると以下の2種に分別できます。精子や卵子さらには両者が合体した受精卵などを生殖細胞(系)と総称され、目や耳、皮膚など身体を構成する細胞を体細胞といいます。
ゲノム編集についてはよりインパクトのある生殖細胞への活用が体細胞への活用より簡易にできてしまうことである。つまり倫理的に課題のある生殖細胞への応用の方が実現性が近いこととなる。
ゲノム編集の最新技術の課題をまとめると以下の2点に集約される。
- 倫理的に問題のある受精卵への応用が、発病後の治療より簡易に可能である
- 遺伝子解析のレベルよりゲノム(遺伝子)を改変する技術の方が進んでいる
テクノロジーの進化によってこの器用で且つ物議を醸しだす最新技術が実用化されたしたとき、人類は社会にどう向き合わなければならないのだろうか。
その困難な答えの一つのヒントを
平昌オリンピックで脚光を浴びたカーリングの吉田知那美選手が故郷でありホームタウンである北見市常呂町へ戻ったときの感動的な凱旋スピーチに求めたい。
私は7歳のときからこの町でカーリングをはじめました。
正直この町、何にもないよね
この町にいても絶対夢はかなわないと思っていた。
だけど、今はこの町にい なかったら夢はかなわなかったな、と思う
子供たちのみんなもたくさんいろんな夢があるかと思うけど、
場所とか関係なくて大切な仲間がいたり家族がいたりとか、
どうしても叶えたい夢があるとか、この町でも叶えられると思います。これからもよろしくお願いします。
遺伝子が解明され、改変されるようになっても、ならなくても、もともと固有の遺伝子は実在しています。そもそも遺伝子だけではなく、世の中の環境というのは固有の事象に溢れています。そこを個性なのかそれとも格差と考えるのでしょうか。
すべての環境に個性があります。そこを認識したうえで、周囲への感謝の気持ちを持ちながら、人生の目標に向け努力し続ける。
今まで以上にそんな心構えが必要なのではないでしょうか。