乱読サラリーマンのオリジナル書評

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【書評:ESG投資】 投資で社会は変わるのか

 

ESG投資 新しい資本主義のかたち

 

行き過ぎた経済格差の問題などから、昨今、資本主義は限界を迎えたと言い放つ識者も見受けます。

 

そのような中、環境(Enviroment)・社会(Social)・企業統治(Governance)を考慮した投資であるESG投資が欧米を中心に広がりつつあります。日本においても年金基金で世界最大の機関投資家であるGPIFがESGの視点を反映させる国連責任投資原則(PRI)に署名しました。このESG投資は今後益々広がり新しい資本主義社会を創るのでしょうか?

 


一般的に機関投資家を通すお金の流れは下記のようになります。

 
一般市民→基金投資団体→運用機関(投資団体から運用を委託された機関)→投資先


ESG投資が広まると、数ある投資先候補からESGにそぐわない投資先は投資されなくなります。リターンを見込める場合でも、投資先候補から外されます。なぜかといえば、環境破壊や社会倫理的に問題がある企業が経済を席巻することは、人類の未来において好ましくない結果を産むからです。長い目で大きな世界観から紐解くとESGを踏まえた投資は結果的にリターンも期待できるというロジックです。

一見人類の幸福のため正しい投資手法のようにも思えるが疑問も沸いてきます。読む前、読みながら感じた疑問も大いにありました。

まず第一に、世の中には法律という罰するツールがあるにも関わらず、企業に対して法律違反にはならないが、良くない行為がある、もしくは善良な振る舞いが少ないということを理由にして、投資判断でNOという姿勢の是非です。


第二に経済合理性との狭間で社会的な悪行の見極めをどのように評価するのかという問題もあります。社会課題というのは時代によって変容していくものだが、果たして時代にあった課題をどのように見極め、制定するのでしょうか。

 

第三に、投資家と企業というのは情報が非対称の関係性ですが、公開されている情報を基にして果たして投資先の評価をする際に適切な評価ができるのでしょうか?
また、投資先がESGを遵守していると正確に見極めることができるのでしょうか。

 

本書には、ESG投資を推進する上での上述の課題や、その解決策も述べており、ESG投資の全体像を考えるには最適な一冊と思えます。

 

本ブログの最後に読了後に感じ気づいたことを記します。

法というツールは国内でそれなりに機能するが国際的にはなかなか機能しづらいものです。そのような中、グローバル企業に対して投資によって牽制することの意義は充分あると思えます。また、自国内においてもすべてを政治や法に社会の行方を任せるのではなく、投資というツールを社会の良き進展に活用すべきです。

 

いうまでもなく、政治家を選び、大事な年金資産などを預けるのは、我々一般市民です。国民一人一人が幸福な社会とは何かと考えながら行動しなければならなければESG投資がいくら広まっても、新しい資本主義など絵の描いた餅になるだけでしょう。