乱読サラリーマンのオリジナル書評

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【書評:共喰い(田中慎弥著)】 はじめて芥川賞作品を読む

読書家と名乗っていながらお恥ずかしいが、恐らく人生で初めて(もしかしたら学生時代に授業で読んだかもしれないが・・・全く記憶には残っていない)芥川賞作品を読了しました。

 

共喰い (集英社文庫)

 

昭和末期の地方の田舎都市、女性に対して暴力的で且つ、一途な愛情とは無縁な父に対して反感を覚える17歳の主人公。血は争えないのか父同様暴力的な一面を醸し出しながら悩みます。物語はそんな主人公とその彼女。暴力的な父親とその暴力を受け入れている後妻。さらには戦争のため、片方の手を失った主人公の母親で暴力的な父の元妻。

 

この5人を軸に刹那的な感情が連続展開されながら進んでいきます。刹那的ではあるが大衆小説のようにジェットコースターの展開ではなく、人の奥底に潜む情念を話言葉ではなく、乾ききった文体で濃厚な描写を書き連ねてます。

 

この手の小説に慣れてないからか正直読み進めるのが少ししんどかった。まず第一に、物語が沈鬱である。次に作者の腕前が高いことから描写が重々しい。もしこれが長編作品なら途中でギブアップした可能性もあっただろう。

 

それでもこの本を読むことをお薦めします。私のような純文学になじみが無い方には尚更薦めたい作品です。主人公とその父親に嫌悪感を持ちながらも、最後まで見届けなければいけないような感覚になる。

 

自分の中でも、文体と描写の不一致感、脳と心の不一致感が立ち現れる。大衆娯楽作品にはない読感。読書脳が一つ成長したような気がしてきた。