乱読サラリーマンのオリジナル書評

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【書評:英語化は愚民化】無意識に使っている日本語をよく考えよう

英語化は愚民化 日本の国力が地に落ちる (集英社新書)

副題には

〈日本の国力が地に落ちる〉

と記されている本書。

内容は過度な英語化政策への批判です。著者の施光恒氏はイギリスの大学院で修士課程を修了した政治学者です。

言葉は単なるツールではなくツール以上に価値あるものです。言語は人の価値観や思考に一定の影響を与えます。(サピア・ウォーフの仮説)
いっぽうツールとしての英語はグローバルビジネスには欠かせない道具であるのも事実です。IT企業がプログラミング言語を使えなければビジネスにならないのと同様です。

 

実は現在7000近くあるといわれている言語ですが、ユネスコの調査によると、そのうち2500もの言語が消滅の危機にあるとの調査結果が出ています。日本でもアイヌ語琉球諸語の一部含め8言語が危機言語リストに上がっています。また、別の調査では、皮肉にも言語の多様性消失と経済成長は相関性ありとの結果も出ています。

 

やや本題とずれましたが、著者が主張するように英語化は果たして日本の国力を貶める政策なのでしょうか。

 

 

流石に日本語そのもの自体が消滅することは想像できませんが、英語のみしか話さない英語特区や大学の授業(英語以外)などオールイングリッシュを推し進めることには私も反対です。なぜならば我々日本人にとって何も意味を見いだせません。日本語という便利で使い馴れたツールを英語以外の知識を身につけるために使用しない意味が見い出せません。英語を話せる人材を増やすためには他に方策は多々あることでしょう。

いっぽう教育政策からみると今の英語教育には問題もあり、小学生から英語の授業を入れたりすることは、ヒアリング能力を高めるためにも必要かとは思います。

 

日本では日本語と一緒に育まれてきた誇るべき日本文化があります。グローバル言語である英語を併用して日本を豊かにするための方策はあるのでしょうか。本書では英語から日本語という土着後への翻訳をあげています。本書によると、聖書もラテン語から現地語の翻訳によって知が広がったと述べられています。明治以降の日本の発展も欧米の先進の知を日本語への翻訳により取り入れ日本独自の文化とのハイブリッドにより成し遂げられたと書かれています。

本書の重要なポイントはここです。英語を身に着けること、英語を読み話せるようになることを否定しているではありません。英語などの他の言語から日本語への翻訳を通した知のシェアが重要であり、アメリカやイギリスの土俵で戦うための武器として行き過ぎた英語化と日本語軽視へとみえる日本政府の政策を政治学者として批判してるのです。英語というツールを駆使して相手の土俵いわゆるアウェイで戦うのか、それとも日本語というアドバンテージを捨てずにホームで戦うのかとの選択とも思えます。

 

因みに低いといわれている日本人の英語スキルとはどの程度なのでしょうか。

www.efjapan.co.jp

 

リンクをご覧になればわかる通り非英語圏で37位と低迷しています。上位にはヨーロッパの国が並んでいますが、フランス32位、イタリア33位、中国が日本より一つだけ上位の36位になっています。このことからも英語力の向上=経済成長の果実という認識はややミスリードであることが窺えます。先人たちの翻訳作業により日本は日本語だけでも豊かで知識レベルも高い国家を成立することができたのです。しかし英語が全く不要というのも暴論であり、ツールとして使いこなせるよう授業などの教育政策はもう一度良く考えるべきでしょう。

 

識字率も高い日本語(国語)教育は今後も重視しつつ、日本語だけでも豊かな生活が送れるような仕組みや内需拡大に繋がる政策を行うべきです。
そのいっぽう経済成長には訪日外国人客や企業の海外進出も重要ですので、英語を話せる人材の需要は今後も増えていくはずです。あくまでもツールとして英語を駆使できる人材を育てる学習環境は何なのかもう一度よく考えるべきです。

 

因みに本書で批判の的になっている楽天の社内英語化ですが、読めばわかりますが、三木谷社長は日本語も重要視しています。また、英語も正統派英語ではなくグロービッシュ(意思疎通ツールとしての英語)です。

本書と共に読むと英語化について理解も深まると思いますのでこちらもご一読を!


 

 

 たかが英語!