乱読サラリーマンのオリジナル書評

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【書評:広島藩の志士(穂高健一著)】 討幕を奥深く読む

広島藩の志士

 

「高間省三」「神機隊」と聴いて広島藩の幕末維新の小説とわかる人は歴史に対してかなりの達人でしょう。維新を考えさせれれ、且つ涙なくして読めない歴史小説です。

討幕の主人公といえば薩長土肥が通説です。そこに尾張も絡んでくるが維新後は影が薄くなります。いっぽう幕軍側も会津を中心とした奥羽越列藩同盟桑名藩、そして新選組あたりまででが一般的な日本人の歴史認識ではなかろうか。その他の藩が討幕時にどのような決断をして時代を生き抜いたのかまでは知らない方も多いと思われます。

 

幕末の勢力はざっくり分けると主に以下の3種に分類できます。

 

 

(1)討幕派

薩長土肥が有名です。ですが、薩摩も長州も討幕か幕府に従順、もしくは、公武合体かなど内部に対立を経ています。

土佐出身の坂本龍馬は脱藩して、ことを成し遂げようとしました。現代風に例えれば、組織に属さずフリーランスの強みを発揮したともいえます。

 

(2)佐幕派

筆頭は会津藩です。徳川幕府への忠誠を誓い、幕末動乱時には京都守護職を拝命して、長州を中心として不逞の輩が跋扈する都を守り孝明天皇からも厚い信頼を得ました。大政奉還後、薩長の新政府軍が会津へ冷厳かつ酷い仕置きを要求すると、奥羽越列藩同盟として新政府軍に反旗を翻す。もとは幕臣であった新撰組も最後まで新政府への抵抗を続けることになります。

 

(3)日和見

幕府の弱体化は誰もが感じていたが、いざ討幕へとは進めない方々である。徳川御三家である尾張藩が新政府に力を貸すまでは、薩長以外の藩はほぼ討幕への確固たる行動は慎んでいました。

 

 

そこで幕末好きの方々に是非読んでもらいたいのが本書です。

 

芸州広島藩の烈士を主人公とした幕末歴史小説です。広島藩頼山陽を輩出したことからもわかる通り尊王との親和性は高い地域です。二回にわたる長州征伐で幕府を見切った広島藩は討幕へと舵を切ります。薩摩と協業しながらすすめ、政治的に失策を重ね身動きのできない長州を味方に入れ大政奉還へと突き進みます。

 

それでは、なぜ大義を持って討幕へと進んだ広島藩は、明治維新以降、歴史の表舞台に出てこなかったのでしょうか?
現実を見据えながら大義を成し遂げようとした広島藩は、日和見とみなされ。明治維新の主役から出遅れます。出遅れを取り戻すべき広島藩の若い烈士達は戊辰戦争の戦火に果敢に参戦します。

その結果どのような結末を迎えるかは、是非本書をご覧ください。

 

大義を崇高な目的と考えると、そこには手段がセットでついてきます。しかしながら少しはき違えると、本来手段であった事項が目的化してしまいます。そのような手段の目的化が進むと過激な行動に行き着くやすくなることは、昨今の世界情勢を見ても伺い知れます。討幕に向けて、やや過激な薩長と現実的な広島藩

 

政治というのは如何に、矛盾が多いことなのだろうか。

色々と考えさせられる歴史小説の佳作です。