乱読サラリーマンのオリジナル書評

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【書評:生涯投資家(村上世彰著)】なぜ、コーポレートガバナンスが必要なのか

生涯投資家

 

著者はコーポレートガバナンスがさほど騒がれてない時期にファンドを率いて一世を風靡した村上世彰氏です。ライブドア事件阪神タイガースの上場問題などを鮮明に覚えている方も多いことでしょう。著者は本書では一貫して「コーポレートガバナンスと、その浸透による資金循環の促進こそが経済成長を促す策」だと言い続けています。

 
上場企業とは どのような役割を果たすべきなのでしょうか。

上場とは、株式が広く一般に売買されるようになることであり、上場企業は、株主や株を買おうとする人たちのために必要な情報を開示しなければならない。上場企業の経営者には、投資家の期待に応え続ける覚悟が問われる。思い通りに株主を選んだり、経営者が好き勝手に行うことはできなくなる。上場とは、私企業が「公器」になることなのだ。 (P22)

 

 

上場するということは端的に言うと不特定多数の投資家からお金を広く集めます。かわりに経営戦略(特にお金の使い方)について投資家を納得させる判断と説明が求められる立場となります。従業員や取引先を納得させることに腐心すれば良いオーナー企業との相違はここにあります。

 

では、投資家は何を求めて資金を供出するのでしょうか。当たり前のようですが、投資家は投資額以上のリターンを求めて出資しています。著者の村上氏は自らの投資スタイルを保有資産と比較して株価が割安に放置されているバリュー投資で実践しています。

 

資産を株主価値向上のために使いこなしてない上場企業の経営は悪だという前提で書かれています。一貫して村上氏はコーポレートガバナンスを駆使して、上場企業の遊休資産を成長のために積極的に活用する、活用先がないのであれば、株主に還元することを経営者に説いてます。

 

経営者は託された資金をいかに効率的に活用して成長していくか、事業のプロフェッショナルとして先を見通した計画を立て、出来る限り情報開示をしなければならない。株主との面談を含め、決算説明会など、すべての株主が企業と平等にコミュニケーションが取れる場を、積極的に設けるべきだ。

このやり取りができているからこそ、株主と投資先企業がWin-Winの関係になれる最重要事項だ。もちろんお互いの意見の相違はあるだろうし、成長を期待して行った投資が失敗に終わることだってある。そういった時こそなおさら、株主とのコミュニケーションが大きな意味を持つ。結果的に失敗に終わっても、経営陣が自らの保身のために、不要な資金を抱え込んで株主からの声を聞こえぬふりをしているような企業より、託された資金を積極的に活用して成長のために挑戦する企業のほうが評価される株式市場であってほしいと思う。(P209-210)

 

株主目線を重きに置いた提言には少しばかりの反論したくもなりますが、経営者の素養も投資家としての目利き能力がMUST条件の時代になったのかも知れません。資本や不動産などの自社資産を何かに投下し、活用して利益をあげるということは投資と同様なメカニズムを踏むことでもあります。従業員に還元することも立派な投資と考えれば、村上氏の提言も理にかなってるように感じます。では、なぜ日本社会では実践されないのでしょうか?

 

私なりの考えは以下の通りです。
一つは日本社会が失敗を許容する土壌が少ないこと。それゆえに再チャレンジ行為も多くない。
もう一つは日本人は人やモノを効率よく使うことは得意ではあるが、お金を有効活用することに長けていないこと。


本書を通して気づいた重要ポイントは、

企業は成長のために、手元資産を有効活用して挑戦すること、
そして失敗を受け入れる社会になること。ここに尽きると感じた次第です。

村上ファンドが世間を騒がせていたあの時、
苦虫を噛み潰したような顔で見ていた皆さんこそ是非本書を読んでみてください。きっと当時と違う世界が見えてくるはずです。