乱読サラリーマンのオリジナル書評

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【書評:43回の殺意(石井光太著】 少年犯罪は時代を映す

43回の殺意 川崎中1男子生徒殺害事件の深層

 

 世を震撼させ、被害者、加害者共に未成年ということで大勢の方々が関心を寄せた川崎の殺人事件。気鋭のノンフィクションライターが、被害者である上村僚太君の父親(母親は取材拒否)から加害者の家庭環境を明らかにします。さらには被害者・加害者と知己のある同年代の少年への取材を通じ、本事件の残忍さだけではなく、社会の問題点を深く突きつけます。

 

離島で育ち、両親の離婚から続く家庭環境の変化により、川崎へ引っ越しした少年がなぜ事件に巻き込まれてしまったのでしょうか。また、被害者より年上とはいえ、同じく未成年であった加害者はなぜ、このような残忍な事件をおこしてしまったのでしょうか。

 京浜工業地帯の中心地で知られている川崎市生活保護の受給比率は全国平均と比較しても高く、さらに事件の現場となった川崎区はその比率が川崎市内でも抜きんでて高い結果となっており、住民が困窮している状況がみてとれます。その影響なのか加害者3人全ては社会への適用能力が低く、人とのコミュニケーションにやや難があったようです。


スマホSNSが少年にも所与となっている昨今、少年たちを取り巻くコミュニティや社会観は一昔前と激変しています。入ってくる情報の量は無限になり、昔であれば善悪の判断力が乏しい未成年へシャットアウトされていた情報も安易に目に入れることが可能となりました。入ってくる情報の多様性から考えて、「児童」や「少年」という言葉でひと括りにするには、もはや時代錯誤といえます。今まで以上に子供にも多様な性格、価値観があることを前提に若年者と寄り添う社会を構築しなければなりません。

 

少年の凶悪犯罪が世間を震撼させ、少年法の是非が問われ、刑事処分可能な年齢も低年齢化している今、大事なことは、少年犯罪の処分を厳罰化だけを論じるのではなく、国として判断能力の乏しい若年層にどのように判断能力を植え付ける策を考えるべきです。 

女性活躍と同時進行で進む共働き世帯の増加に、親の経済力からくる教育格差と若年者を巡る環境は一昔前とは大幅に変わってきています。 

 

公立小中学校における不登校の要因を厚生労働省が統計を出しています。

 

学校と家庭に関わる要因として

  1. 家庭環境 34.9%
  2. いじめを除く友人関係 25.5%
  3. 学業の不振 19.7%

いじめが要因の不登校は、なんと0.5%と少数派となります。

 

続いて本人に関わる要因では

  1. 「不安」の傾向がある 31.0%
  2. 「無気力」の傾向がある 30.7%
  3. 「学校における人間関係」に課題を抱えている 16.8%

 

驚くことに本人に関わる要因で「あそび・非行」の傾向があるとの統計数値は4.8%とこれまた少数派です。この統計数値からも少年犯罪のニュースだけでは伺い知れない複雑な背景があることが推測できます。


少年犯罪は起きた時代のダークな本質を映す鏡のようなものだと思えます。

加害者はちょっとしたことから殺人事件の前に被害者の顔が腫れあがるほど殴っています。しかし、その傷害事件の事実を地元で恐れる同年代のY兄弟たちに握られ、逆に脅迫されます。脅迫された主犯格の加害者Aは事件当日に僚太君を殺めてしまいます。

 

本事件が、世間の注目を浴びたのはその残忍性が背景にありますが、
被害者意識に凝り固まり殺人事件を起こした加害者、
もしくは外交的な性格ながら、複雑な家庭環境から、非行少年たちのグループとつるむようになり、殺人事件の被害者になってしまった僚太君。
この相対する2つの立場のどちらかに自分のパーソナリティを重ね合わせることで同心、同情が生まれてくるのはないのでしょうか。


親が、、、学校が、、、、政治が、、、などと、単一的にどこかに責任を押し付けるのではなく、今こそ社会全体で考え、日本の未来を創る少年少女を社会適応できる人材へと導く潮流を確固にすることが必要だと本書を読んで強く感じました。