乱読サラリーマンのオリジナル書評

読書は教養を広げる、教養を広げれば、人生も豊かになる。そんな思いでブログを書き続けます!

2018-01-01から1年間の記事一覧

【書評:維新の肖像(安部龍太郎著)】 失政はどこから生まれるのか

維新の肖像 (角川文庫) 平和の提唱者として、日露戦争を正義のための衝突と肯定し、戦後交渉でも力を発揮した朝河貫一。しかしながら、朝河の思いとは別に日露戦争後、日本は帝国化へと突き進むことになります。母国の変節ぶりを考慮した朝河は1909年に今な…

【書評:キリンビール高知支店の奇跡】現場力とは何か

キリンビール高知支店の奇跡 勝利の法則は現場で拾え! (講談社+α新書) 心が変われば行動が変わる ここでいう心とは意識のことです。それでは、会社という自分の思い通りにならない集団生活で会社の成功に沿った方向へ意識を変えることは簡単に出来るのでしょ…

【書評:野望の憑依者(伊東潤著)】 悪党が滅びるとき・・・

野望の憑依者 (徳間時代小説文庫) 歴史小説といえば、戦国と幕末明治維新が、質量ともに抜きんでていますが、私は南北朝時代も好きです。しかしながら、この時代の歴史小説は僅かです。鎌倉幕府を終焉させ、朝廷と武士が入り混じりながら、建武の新政を経て…

【書評:IoTまるわかり(三菱総合研究所 編】 つながったらどう変わるのか・・・ 

IoTまるわかり (日経文庫) ここ数年のバスワードの一つである”IoT”とはなんでしょうか。Internet of Thingsの略称であり、モノのインターネット化と抽象的に説明がつきますが、IoTで世の中の何が変わるのでしょうか? あらゆるモノがインターネットに繋がる…

【書評:43回の殺意(石井光太著】 少年犯罪は時代を映す

43回の殺意 川崎中1男子生徒殺害事件の深層 世を震撼させ、被害者、加害者共に未成年ということで大勢の方々が関心を寄せた川崎の殺人事件。気鋭のノンフィクションライターが、被害者である上村僚太君の父親(母親は取材拒否)から加害者の家庭環境を明らか…

【書評:生涯投資家(村上世彰著)】なぜ、コーポレートガバナンスが必要なのか

生涯投資家 著者はコーポレートガバナンスがさほど騒がれてない時期にファンドを率いて一世を風靡した村上世彰氏です。ライブドア事件、阪神タイガースの上場問題などを鮮明に覚えている方も多いことでしょう。著者は本書では一貫して「コーポレートガバナン…

【書評:全員経営(野中郁次郎・勝見明著)】イノベーションとは?

全員経営 ―自律分散イノベーション企業 成功の本質 経済成長、企業進展にイノベーションはかかせません。シュンペーターはイノベーションを以下の5つに分類しました。 ①新しい財貨の生産 (プロダクトイノベーション)②新しい生産方法の導入(プロセスイノ…

【書評:サッカーと愛国(清義明著)】 スタジアムは社会の縮図なのか・・・

サッカーと愛国 世界で最も人気のあるスポーツはサッカーです。いっぽうでその事実は、世界で最も影響力の大きいスポーツともいえます。実はFIFA(国際サッカー連盟)にIOC(国際オリンピック委員会)さらには国連これらの加盟国数をみると一番加盟国数が多…

【書評:広島藩の志士(穂高健一著)】 討幕を奥深く読む

広島藩の志士 「高間省三」「神機隊」と聴いて広島藩の幕末維新の小説とわかる人は歴史に対してかなりの達人でしょう。維新を考えさせれれ、且つ涙なくして読めない歴史小説です。 討幕の主人公といえば薩長土肥が通説です。そこに尾張も絡んでくるが維新後…

【書評:英語化は愚民化】無意識に使っている日本語をよく考えよう

英語化は愚民化 日本の国力が地に落ちる (集英社新書) 副題には 〈日本の国力が地に落ちる〉 と記されている本書。 内容は過度な英語化政策への批判です。著者の施光恒氏はイギリスの大学院で修士課程を修了した政治学者です。 言葉は単なるツールではなくツ…

【書評:共喰い(田中慎弥著)】 はじめて芥川賞作品を読む

読書家と名乗っていながらお恥ずかしいが、恐らく人生で初めて(もしかしたら学生時代に授業で読んだかもしれないが・・・全く記憶には残っていない)芥川賞作品を読了しました。 共喰い (集英社文庫) 昭和末期の地方の田舎都市、女性に対して暴力的で且つ、…

【書評:ESG投資】 投資で社会は変わるのか

ESG投資 新しい資本主義のかたち 行き過ぎた経済格差の問題などから、昨今、資本主義は限界を迎えたと言い放つ識者も見受けます。 そのような中、環境(Enviroment)・社会(Social)・企業統治(Governance)を考慮した投資であるESG投資が欧米を中心に広が…

【書評:墨攻】戦乱の世に彗星のごとく現れ、古代中国を席巻した思想集団”墨家”の果てを考える

墨攻(酒見賢一著)を読み。以前より興味を抱いていた墨家の本質を窺い知れる傑作である。 儒家と並び称されるほど隆盛を誇った墨家はなぜ、歴史から消えてしまったのだろうか。非攻、兼愛を強烈に実践し続けた思想集団の果てはなぜ起きたのかを紐解いてみま…

【書評:ゲノム編集からはじまる新世界】ゲノム・遺伝子と掛けてカーリング女子と説く

神の領域とも言われるゲノム編集クリスパーキャス9とはどのような技術なのか?この技術を手に入れた人類はどこへ向かうのか。一番大事なことは自分自身がこのような世界にどう向き合うかを本を読んで考えてみた。 答はカーリング女子の凱旋パレードにヒント…

矛盾との付き合い方を考える 【書評:煤煙(北方謙三著)】

北方謙三の煤煙を読んだ。主人公はバツイチ弁護士。自身で気づきながらも誤った方向へと突き進んでしまう男の物語である。社会に溢れる矛盾について、どう向き合うのか、考えさせてくれる。

【書評:諸子百家(中公新書)】・・・読後に墨家について考える

古代中国春秋戦国時代の偉大な思想家たち。諸子百家(中公新書)から、偉人の思想のエッセンスを読み取る。その中でも、一度沈みながら近代において見直されつつある墨子の思想墨家について考えてみる

日本企業の営業力

戦後、敗戦からの復興を目指した日本は、長期にわたる高度経済成長を経て「東洋の奇跡」と呼ばれました。 技術力を磨き自動車産業や電化製品は世界一の経済大国であるアメリカのマーケットに果敢に進出し、名だたる大企業を凌駕してマーケットリーダーとなり…

書評:下天を謀る

藤堂高虎といえば主君を七回も変えたことで変節漢、処世術に長けた世渡り上手のような印象の強い御仁です。本書を読めばその印象は誤っていることに気づくでしょう。もっばら最近では築城名手の智将として評価が高くなってきた戦国武将です。 本書は高虎をた…

読書の嗜好性

本は幅広い分野を読むと良いという。自分自身でもそれを実践しているつもりでした。自分なりに確実に読まないと決めている本といえばSF小説くらいです。ただ、小説(SF小説以外)を買うときは本屋で棚を眺めながら、感覚で買うことが多い。自分なりにはビジ…

書評:後妻業

後妻業 (文春文庫) 直木賞作家で映画化もされた作品。読む前から期待が膨らみます。 しかしながら、 登場人物は悪人ばかり ノワール小説なのに人の死もナレーションのようにあっけない。 謎解きの語り部である元刑事も善人ではなく、ハードボイルド小説のよ…

書評:幕末史 

幕末史 (新潮文庫) 勝者の歴史に対するアンチテーゼとでもいうべきなのだろうか、最近”反薩長史観”なるキーワードをよく聞きます。 本書は2008年に大学での講義を基に作成された書でありここ数年の反薩長史観が溢れてきてからの書ではありません。著者の本は…

故郷日本に帰れなかった国際人 音吉(ジョン・マシュー・オトソン)

人が抗えない自然と鎖国という政策に人生を翻弄されながら、強く生き続けた日本人漂流民「音吉」の歴史小説。